妖怪がいる国

  • お名前:京極秋彦
  • 投稿日:2022/2/21 16:07:57

しんと静まり返った暗い部屋にいると、何も動いていないのに突然「みしっ」と音がしたりする。昔の木造家屋では、そんなことがよくあった。「家鳴り(やなり)」という妖怪の仕業である。子供の頃はそんな「みしっ」「きしっ」に少なからず恐怖心を抱いたものだが、大人になった今では音の正体が、湿気や乾燥などで木材が伸び縮みする際に発する音であることも知っている。しかし日本は古来、怪奇現象や不思議な力を「妖怪」のせいだと考えてきた。コロナで一世風靡したアマビエや、河童や天狗などお馴染みのもの、小豆洗いやぬらりひょんまで妖怪と名のつくものは様々だ。その姿は実にユニークでバラエティに富んでいて、もはや日本の文化といっても差し支えないだろう。今はマンションなど密閉した空間が増えたので、妖怪の存在を身近に感じることが少なくなって寂しい限りだが、想像力をかきたてる魑魅魍魎たちが跋扈していた古き良き日本も忘れないでいたいものだ。